vol.9 初めての○○ 今回の食べ歩き パリ6区ポワラーヌのタルト・オ・ポム→→ |
初めて一人で行った海外旅行の行き先はパリでした。 半年間学んだフランス語の成果を試すべく、と言いつつ、日本語の通じる日系の航空会社の航空券を取り、旅行会社を通して日本からホテルを予約、オペラのチケットも日本の代理店を通して事前に手配する、というかなり万全な旅。 それでもパリ3度目にして初めて一人での滞在、頼れる誰かと一緒に過ごす旅と違い緊張の連続、何もかもが新鮮でどんなに些細な事にも達成感と満足感が伴う貴重な時間を過ごしました。 |
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その後、留学し言葉も少しだけ上達、一人暮らしをして土地勘ができ、行けばいつでも部屋を貸して下さる友人にも恵まれて、私にとってパリは気ままに一人で出かけることのできる街となりました。 今でも憧れの街、第二のふるさと、と言うほど馴染んでもいないけれど、どんなに久々でも短期間でも、行けば必ず‘生活’が待ってくれています。 |
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大好きなパリが自分にとってそういう存在になった事は嬉しいけれど、残念ながら失ってしまったものが一つ、純粋な観光客としての感覚、です。 |
パリの全てを知っているわけではないので、行けば行ったで新たな発見や感動は必ずあるけれど、初めて一人で過ごした時の感覚はあの1度きり、時間を惜しんで街歩きに没頭し、ケーキ一つ買うのにも緊張していた初めて尽くしの1週間。 地図を見ないで街を歩けるようになったのは嬉しいけれど、あの達成感や満足感をもう味わえないと思うと、何となくちょっとだけ残念です。 |
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旅行に限らず‘初めての○○’って何でも貴重だと思います。 ‘初めての○○’には大人になった今でも時々出会うけれど、どれも1度経験してしまったら最後、毎回‘初めて’の感覚を見逃さず、大切に精一杯楽しまなくっちゃもったいない、と思います。 |
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初めての一人パリ旅行は6月、ちょうど今頃旅の計画を練っていたんだな、と、懐かしい写真を引っ張り出してみました。 |
vol.8 空想スイッチ 今回の食べ歩き パリ6区サダハル・アオキ・パリの黒ゴマのエクレア→→ |
先日エレベーターで派手に泣き叫ぶ小さな男の子を連れたお母さんと一緒になりました。 よくある事なのかお母さんは動じていませんでしたが、降りがけに‘お菓子買いに行こう、ね?’となだめる様子。 残念ながら男の子は泣き叫んだまま手を引かれて行きましたが、そうか、こういう時親は子供をお菓子で誘惑したりするんだ、と、変なところに納得してしまいました。 子供の頃の自分がお菓子に誘惑されていたかどうか・・・は覚えていませんが、自分も子供ができたらお菓子を武器に子供をなだめたりするのかな?と空想スイッチ、オン。 |
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おいしい手料理があれば旦那様は必ずうちに帰ってくる、なんて話は聞くけれど、おいしいお菓子を作ったら子供はお母さん大好きっ子に育ってくれるかしら。
お母さんのクッキーが一番、なんて言われたら幸せだろうな。 でも毎日手作りおやつを用意する、、、なんてやっぱり無理かな。 自分もたまにはパティスリーのケーキ食べたくなるだろうし。 せっかく作ったケーキをおいしくないって言われたら・・・落ち込みそう。 でも毎回手が込んでいなくても笑顔を想像しながら作る出来立ての味は格別なはず! 試作品を出し続けたら嫌がられちゃうよな、その前に肥満児になるのは避けなくちゃ。
困った時に誘惑できるほどのお菓子、作ってあげられるかなー。
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お菓子作りの本はもちろんお菓子教室もたくさんあって、必要な器具や材料も手軽に手に入る今、意外と手作りお菓子派のお母さんって多いのかもしれません。 それに、アレルギー体質のお子さんが増えていたり、スローフードが見直され原材料への関心が高くなっている今、手作りお菓子の出番は増えていると思います。 いつか自分が子供を持った時、自分の作ったお菓子で子供を誘惑するかどうか・・・はわかりませんが、うん、やっぱり無理のない範囲で手作りお菓子を食べさせてあげよう、と、空想の世界から固い決心までしてしまいました。 |
vol.7 桜と言えば・・・ 今回の食べ歩き パリ6区ジュラール・ミュロのタルトシトロン→→ |
街中で自然から季節を感じる機会は少なくなっていますが、暖かくなるとどこにいても必ずピンクが目に飛び込んできます。 大好きな桜、春がきたんだなー、と感じずにはいられません。 |
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本格的な季節はまだ先のようですが、去年は3月末に見頃だった早咲きで有名な実家の近くの桜の木、今年は随分前からすっかり満開です。 | |
暖冬や熱帯夜、温暖化の影響で年間平均気温も上昇し桜の開花も早くなるなど、日本の四季が変化するとともに、食べ物で楽しむ季節も栽培や保存・流通技術の発達で良くも悪くも様変わり、旬を実感する事が少なくなってきたように思います。 多くの野菜や果物は季節に関わらず手に入るし、例えば桜の花や葉の塩漬けも通年安定した品質のものを手に入れる事ができます。 でも、トマトや大根を年中食べられるのは助かるけれど、年中山菜が出回るようになったら何だか逆に勿体無い。 いつでも苺のタルトやマロングラッセを食べられるのは嬉しいけれど、桜のお菓子は桜の季節に食べるからこそお腹も心も満たされます。 |
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jouir oeuf初めての春、桜の花の塩漬けとキャラメルクリームを練り込んだカトカールをご用意しました。 綺麗な桜色を目指すなら食紅でほんのりピンクに仕上げる事も可能ですが、せっかく季節を感じるならあくまでも自然体、ところどころに顔を出す桜の花びらのピンクで春を感じて頂ければと思います。 |
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桜と言えば春、世界中の人たちがそう感じているとばかり思っていた子供の頃、外国では桜がさほど重要視されていないと知って驚いたのを覚えています。 同じ日本でも北と南では開花の時期に幅がありますが、桜を見て春を感じない人はいないはず、日本人としてのそういう感覚はずっと大切にしていきたいと思います。 |
vol.6 道具の話 今回の食べ歩き ラ・メゾン・ド・ショコラのチョコレートエクレア→→ |
2月14日はバレンタイン・デーでした。 最近の私はもっぱらお気に入りのショコラティエのチョコレートを買う事が多いのですが、初めてのお菓子作りはバレンタイン、そんな人も多いのではないでしょうか。 私も子供の頃、今思うととんでもなく大雑把、適当に溶かして型に流し込んだチョコレートが固まらなくて悩んでいたのも懐かしい思い出です。 |
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そんな子供の頃のお菓子作りは家にある道具、母の道具を借りながらの作業でしたが、気付けば自分用の道具がどんどん増えて収納に頭を悩ます事もしばしば。 何でもかんでも買い揃えればいい、という物ではありませんが、道具を一つ買い足すだけで作業効率がぐんとよくなったりするので、新しい道具を吟味して購入するのもお菓子作りには大切な作業だと思います。 |
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年末に新しいデジタル秤を購入しました。 条件は、今までのプラスチック製の1キロ秤とは違う、ステンレス製でなおかつ2キロ計れる事。 同じ値段ですっきりしたスクエア型と、丸くて折り畳みのスタンド収納型がありました。 スタンド収納する必要性は感じなかったので悩んだのですが、折り畳まずに今まで通り収納したっていいわけだし、、、と思い結局第一印象で目を引いた、折り畳みのスタンド収納型を購入、いざ使ってみると。 立てて収納できるのがものすごーく便利である事を発見。 今までは棚の中に収納していたのですが、立てる事によって場所を取らずそのまま作業台に出しておけるし、立ってる姿が秤に見えなくてまたいい感じ、作業効率も上がって気分も上々です。 |
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最近は機能だけではなく見た目でも満足できる道具が増えているなーと思います。 作業効率を重視するのももちろんですが、どんな機能に重点を置くかは人それぞれだし、効率よりも何よりも、楽しく気持ちよく作業ができる事もやっぱり大切です。 たまにしかお菓子を作らない人も、ちょっと見た目にこだわって、自分なりの条件にあった道具を探してみると、お菓子作りにはまってしまうかも?しれません。 大好きな道具に囲まれてお菓子を作る楽しさ、是非ご賞味下さい。 |
vol.5 おいしい組み合わせ 今回の食べ歩き モンマルトルで食べたクレープ→→ |
お正月早々、おいしいワインとフランス料理が頂けるお店に行ってきました。 | |
食事があればお酒はなくても大丈夫、という程度の飲みっぷりなのですが、おいしいお料理、特にフレンチやイタリアンを食べるとさすがにワインが飲みたくなります。 | |
でも量を飲めないのでアペリティフだけで十分だったり、前菜にあわせたワイン一杯でメインまでいってしまったり、なかなかお料理との組み合わせが楽しめないのが現実。 |
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でも今回は新年、せっかくなのでシャンパンから始めて、それぞれのお料理に合わせたワインも楽しんできました。 |
色々と個性のあるワインを出して頂いたのであまり詳しくない私にも違いがわかるし、お料理との相性も存分に楽しませて頂いて、ワインの奥深さを改めて実感。 一杯を飲みきらないまま次のワインに進むのは気が引けるのですが、グラスに控えめに注いで頂いたので全てのワインをきちんと堪能、舌も心も大満足。 おいしいワインとお料理に程よいサービスで至福の一時、いい1年になりそうな予感です。 |
さてさて、お料理に限らずデザート、お菓子も同様にドリンクとの相性を考えて頂くと確実においしさが倍増!です。 例えばjouir oeuf、今なら、ショコラショーとオレンジピールのケーキ、ミルクを入れたキャラメルティと焼きリンゴ、ショコラにはすっきりコナコーヒー、小倉バナナケーキにセイロンディンブラ、なんて組み合わせはどうでしょう。 もちろんお好みで、まだまだ組み合わせの可能性は無限大です。 |
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そう、自宅でのおやつの時間だって、ちょっと組み合わせを考えてドリンクを変えてみるだけで、きっとぐーんと楽しくなります、是非お試し下さい。 | |
年が明けてもう3週間、jouir oeufがオープンして半年ちょっと、時間が経つのって早いなーとしみじみ感じます。 今年1年も、カフェに来たみなさんがいい一日を予感できるような空間を目指して、詠子ちゃんのいれるドリンクに合わせたおいしいケーキを作っていけたらな、と思います。 |
vol.4 ノエル 今回の食べ歩き パリ5区 ル・ブーランジェ・ド・モンジュの パン・オ・レザン→→ |
ノエル=クリスマスと言えば、パーティのお料理にケーキにプレゼント。 どれも興味ありですが、私が一番好きなのは当日はもちろん1ヶ月近く前から楽しむ事のできる‘飾りつけ’です。 年に一時期しか実行できませんが、クリスマスの飾り付けは私の趣味の一つと言っても過言ではありません。 毎年同じではつまらない、という事で、少しづつ買い足す飾りを、配置を変え組み合わせを変え出しては引いて、1年限りでさよならしないよう、飽きずにいかに長く楽しむか、が自分の中の密かなテーマだったりします。 |
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数年前、ハワイでサンタのオーナメントを見つけた瞬間一目惚れ、日本に帰ったら思いはすっかり冷めてしまったものの・・・ 大切なコレクション、いつかまたきっと再登場。 |
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去年の秋のパリ旅行では、ぎりぎりで出始めていたノエル商品をゲット。 |
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季節はずれでセール価格になっている商品も迷わず購入、次のクリスマスには大活躍。 | |
今年の夏に行ったNYでも、クリスマスに並べて使おう!と思わせてくれるきれいな色のキャンドルホルダー発見、重かった〜。
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パリで激安で購入した赤いお月様は何年か温めた末、去年ようやく登場。 | |
旅先の京都でたまたま見つけたサンタさんは思いがけず大好評でした。 | |
リースはここ数年、きよ子先生のレッスンで作っています。 |
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という具合に旅先はもちろん一年中忘れることなく飾り付けに余念のないクリスマス、我が家のパーティで料理の担当は私ですが、デザートは毎年お友達がクリスマス限定のケーキを買ってきてくれています。 年に1回パティスリーの華やかなケーキをホールで楽しむ贅沢も魅力的、この習慣は当分続きそうです。 |
11月1日、美術館併設カフェjouir oeufを改めてご紹介させて頂くべく、ケーキ
と共にサパトスさんの素敵なボサノバを楽しんで頂こう、というイベントが開催され
ました。 天候にも恵まれた心地よい秋の一日、来られなかった方・・・残念! |
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私の担当したケーキはライブの途中休憩で登場。 メニューや盛り付けが確定するまでは長ーい道のりでした。 何度も試食をしてくれてキュートなお皿を用意してくれた詠子ちゃんには感謝です。 秋の箱根→季節限定‘蕎麦マロン’ ジュイルウフ→季節替わりの定番‘ノワゼットバナーヌ’ まったり食感をプラス→冬の新メニュー‘ショコラ’ |
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普段の接客はお任せしているので私自身お客様とお会いする機会はなかなかなかったのですが、この日は私も午後のひと時を箱根で過ごしたくさんの方にお声をかけて頂いて、本当にいい一日になりました。 |
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それにしても、開放的な空間で聴く演奏の心地よかったこと。 サパトスさんの素敵な音楽と自分の作ったケーキが同じ空間に存在しているんだな、そんな事に気付いて、ちょっとこそばゆい気持ちになったりしていました。 遠藤夫妻に大感謝です。 |
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そして、来て下さったたくさんの方、スタッフのみなさん、快くお手伝いをしてくれたKちゃん・Tちゃん・Nちゃん、遠路はるばる来てくれたYちゃん・Tちゃん、ありがとうございました! |
これからも、おいしさの中にjouir oeufらしさとほんのちょっとだけ自分らしさ、そして季節感を取り入れたお菓子を作っていきたいと思っています。 みなさんにはそれを、何も考えずにぱくっと食べて、にこっと笑顔になって頂ければ・・・満足です。 |
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箱根の景色同様、jouir oeufのケーキも季節ごとに変わります、お楽しみに。 |
パリには学生時代から何度か行った事があって、観光やショッピングにおいしいものもぼちぼち、といった具合に普通に楽しんでいましたが、特に思い入れがあったわけではありません。 ちなみに国文科の学生だった頃の第二外国語はフランス語、ではなく、中国語でした。 |
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が、ある年の秋、 持て余した時間で自分磨きをしてみよう、と思い立ち、イタリア語と迷った末に始めたフランス語。 まともにフランス人と接触すらした事のなかった当時、まずは日本人に習ってみようと、文化センターの‘旅のフランス語’という講座へ通ったのですが、第一回目のレッスンでフランス語を学ぶ目的を聞かれた時、‘パリのパティスリーでフランス語でケーキを買いたいから’、と答えている自分がいました。 私の中のお菓子欲、知らないうちにグローバル化です。 |
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そして講座が終了した春、お世話になった先生の紹介でフランス人の個人レッスンを受け始め、ほどなく初海外一人旅でパリに行き‘フランス語でケーキを買う’という目的を達成、思っている以上に有言実行な自分を実感。 と同時に、パリって素敵かも、と気付いてしまい、その年の秋には子供の頃から好きだったお菓子作りを本場で学ぶためのパリ留学を決意、新年早々に渡仏。 パリでは料理学校の製菓コースに通い春には帰国、の予定が、2週間の約束だったスタージュ(研修)を何度も延長し、帰国したのはすっかり暑くなった、その年の夏でした。 |
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たくさんの事を学んでたくさんの方と出会ったパリ留学からはずいぶん時間がたちましたが、レッスンを受けるため、あるいは友達に会うため、パリへは時々遊びに行っています。 お菓子好きの私がフランス語を始めたことで、パリは私にとって大切な街のひとつとなりました。 |
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帰国後はフランスや食を通して色々なお仕事のお手伝いをしていますが、こうしてジュイルウフでケーキを出しているのも、パリでの出会いがきっかけです。 あの時フランス語を始めていなかったら、 パリに行っていなかったら。 それはそれで違った人生があったかもしれないけれど、やっぱりあの時パリに行ってよかった、と心の底から思う、今日この頃です。 |
子供の頃のお菓子と言えば、 お店で買うというよりは母が作るもの。 市販のケーキやスナック菓子を食べる機会ももちろんありましたが、クッキーやマドレーヌといった焼き菓子をはじめ、 ショートケーキにアップルパイ、チーズケーキにババロア、プリンやシュークリーム、等々定番のお菓子は母がよく作ってくれていました。 たまにしか食べない分ケーキ屋さんのケーキには子供ながらに特別感があったし、ジャンクなお菓子には魅力を感じていましたが、母の手作りとなるとそれはそれでまた格別、大きく切ってみたり、いくつもお代わりしてみたり、完成する前からつまみ食いをしてはお腹いっぱい食べて、お店のケーキじゃこうはいかないよな〜、と思っていたものです。 |
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そんな私が初めて作ったお菓子が何だったか・・・という明確な記憶は残念ながらありませんが、小学生の頃にはお誕生日に母の焼いてくれたスポンジケーキに自分でデコレーションをしてみたり、簡単なクッキーを作ってみたり、中学生になると、自分でお菓子作りの本を買ってきては、一人でお菓子を作るようになっていました。 食べるだけではない、作るお菓子生活も、ごくごく自然に始まりました。 その後フランス菓子に興味を持ち、本場で学ぶ機会に恵まれて、そしてこうしてお菓子作りが仕事になるなんて、・・・思ってもみませんでしたが。 |
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毎日のようにお菓子の試作をしている今でも、ケーキ屋さんのケーキやカフェのデザートには目がないし、うちに溜まった試作品も、駄目出しをしつつせっせと食べています。 どんなに食べても作っても飽きないお菓子は、 きっと一生付き合っていけるパートナーに違いありません。 この先も、もっとおいしいお菓子を食べたいと思うし、作りたいと思います。 今の私が作りたいのは、 毎日でも食べたいと思ってもらえるような、 食べたらほっと一息笑顔になれるような、 自然体のお菓子。 私の作ったケーキやクッキーを食べて、一人でも多くの人が笑顔になってくれればいいなと思います。 ジュイルウフという空間を提供してくれた箱根写真美術館の詠子ちゃんに、感謝。 |